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文芸サークル「名で充ちた空」ブログ

名で充ちた空

カニューシャ第1巻47 | main | カニューシャ第1巻45
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カニューシャ第1巻46

 終日快晴となった七夕を二時間過ぎた時点。
 三十五区一高い天空住宅は石油依存から脱却した都に吹く清涼な夜風を環境由来空調とすべく、ゆっくりと帳壁を制御していた。
 その開放的な設計構想を実現する為に必須だった濃密な警備端末群はコウヨウコの風通しの良い特別室にも満ちており、彼女の無防備な寝姿を最適な撮影角度で録画していた。

「誰か!」
 コウヨウコは悲鳴と共に跳ね起きた。
 瞬時に反応した天井の半球型防犯端末は、それを寝台で魘されていた店子の寝言と判定して再び待機状態に戻る。
 天井の受像素材は再び現在の夜空を映す。
 月明かりの他は待機家電の合図素子が数カ所灯るのみの寝室で混乱に目を潤ませながら彼女は自分の裸を薄い夜具で包み直した。
 冷えた寝汗と得体の知れない惨めな気分にコウヨウコの身体は震えていた。
 察した空調が外気の遮断を決定する。
 身に覚えの無い大粒の落涙が始まって、そこで漸く彼女は状況に気づいた。
 共有剤を接種した誰かの感情を肌を通して神経系が受信している。
 信じ難いこの苦痛と涙は、その誰かの物。
 これほどの辛い気持ちは何に由来するのか。
 相手の記憶も共有出来る才脳搭載少女なら直ぐに分かるのだろうが、共有剤系カニューシャであるコウヨウコに、その機能は無い。
 寝台脇の卓子に置いていた掛け視野を装着し暗い手元に画面を呼び出す。
 繋いだまま眠っていたコウヨウコ以外に居たカニューシャは一名だけだった。

「申し訳ございません!
 大変失礼いたしました!」
 珍しく取り乱した様子で謝罪に現れたのは階下に住み込んでいる年上の秘書長だった。
 時間帯を考えるに仕事着を脱いで入浴も終えて床に就く直前だったのだろう。
 そこから急遽着替えたらしい彼女は初めて見る私服姿だった。
 来訪を察知して部屋は様相を変えている。
「シズワタさん。
 いきなり土下座されても分からない」
 祝福された肌だから許される簡単な洗顔をした後は電話越しにも悲壮だった相手の願い通り接続を切り寝室で待機していたコウヨウコは絨毯に額を擦り付ける年長者に困惑した。
 化粧着姿でシズワタに近づくと幼子に物を尋ねる様にコウヨウコは跪いた。
「責める為に呼んだのでは有りません。
 シズワタさん、私は貴方にとって年下の上司であるけれど、姉でもあるのです。
 どうか、姉を信じて欲しい」
 あやす様な言葉にシズワタは恐る恐る泣き腫らした跡の有る顔を上げ、直後に全身を硬直させて赤面した。
「?」
 妹もまた、長女の化粧着姿を見るのは初めてなのだと言う事を、コウヨウコは認識出来ていなかった。

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テーマ:同人系 - ジャンル:小説・文学

| カニューシャ | 22:06 | トラックバック:0コメント:0
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  • 同人小説の発表だけでなく作詞も行うので「文芸」サークル。
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