名で充ちた空


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カニューシャ第2巻1
2005/09/25 00:08

 校内放送で呼び出されたシズワタは、その
知らせに座り込んでしまった。
 母は生物学的超健常技術に関する脆弱性隠
蔽と顧客情報不正閲覧の容疑で逮捕された。
 母の勤め先は、販売していた受精卵の或る
世代に保証書として埋め込んでいた特許遺伝
子に医学的な脆弱性を発見しながら、その報
告を改竄して発表し、該当する顧客に対し極
秘裏に遺伝子治療を施していた。
 シズワタの母は、不正に至る全ての意志決
定に関わっていた。
 また発覚した脆弱性の該当者名簿にはシズ
ワタも含まれていた。
 会社が行った対策治療の有効性が医学的に
確認された瞬間、その犯罪は破壊活動防止庁
によって暴露された。
 不正の一部始終を監視し、その解決手段を
確保した上で容赦無く公共に晒す。
 シズワタは、その時初めて、都を掌握した
透明な検索機関の恐ろしさを体験した。
 後は、ただ結末だった。
 飛躍を決意して願書を提出していた大学院
からは、受験資格剥奪の通知が届いた。
 筆頭保護者の名義が凍結された為、立ち退
きの期限を数える通知を開封する事が、自宅
に一人待つシズワタの日課となった。
 経済的保護者のいない女子として再度、資
産学徒になれる進学先を探したが、受験資格
辞退者待ちの手続きは徒労に終わった。
 何一つ目処の付かないままシズワタは卒業
を迎える事となった。
 貯金を崩して美容室に身を委ね、正装して
もシズワタの姿に生気は無かった。
 何故か残響が耳に付く会場に、実母はもち
ろん、早々に損切りを実行した他の保護者達
も現れる事は無く、腕章を付けた記録用の業
者もシズワタの姿を撮ろうとはしなかった。
 苗字も協賛も無く自分の名前だけが書かれ
た未だに紙媒体が伝統の卒業証書を、冷えた
手で一人受け取り、シズワタは一礼した。
 その瞬間の穏やかな表情すら誰も撮影しよ
うとはせず、手順通りの手早い拍手だけを受
けて、シズワタは壇上を後にした。
 二次会にすら出席せず家に戻り眠っていた
シズワタに実母との面会を許す知らせが届い
たのは日付が変わった瞬間だった。
 場所は、シズワタも良く知る都内の料理店。
 指定時刻は、一時間後だった。

カテゴリ:カニューシャ

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