名で充ちた空


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カニューシャ第1巻43
2006/04/01 18:20

「ヨツユさん、私ひょっとして特務員として信頼されてないんですか?」
 会見場の映像も質疑の音声も中継不可にされたままのキミハはようやく上司の意図に気づいた様だった。
 許されたのは、対象の掌に定着させた生体無線局から漏洩する感覚をカニューシャとして盗聴する事のみ。
 つまりキミハは焦燥感や緊張、その緩和や急激な悪寒だけを机の上で自律神経系に受信しては悶える生身の嘘発見器になっていた。
 息は潜めようとしても乱れる。
「吐きそう。
 気持ち悪い」
 嘔吐寸前で堪える繰り返しに疲労し続ける。
 資本制民主主義に生きる貴人として教育された榻摩 幸容子の身体を内側から責め立てる緊張をキミハの全身は直接的に翻訳した。
 夏物の着衣から露出した肌は収縮し、拍動は促進され血圧は高まり喉の乾きに舌が動く。
 身体感覚の衝突も煩わしい機器で拘束されたまま俯せになる少女を苦しめる。
 黒髪や苦悶に歪む眉、硝子の机に押しつけた掌、肌着も脂汗に濡れていた。
 才脳を搭載しながら共有剤も接種していたキミハだからこそ起きる劇的な現象に装着した測定装置は敏感に反応しヨツユの投影板に定量化した弱音を送信し続けていた。
「言い出したのはキミハでしょう?」
 ヨツユは熟練の付け爪捌きで投影板に映る質問の方針を選択していく。
「不自然な緊張を感じたら教えなさい」
 視界の片隅に掛け視野が可視化したキミハの容体を無視する様にヨツユは受話器を片手に持ったまま使い雛の管制に没頭していた。

カテゴリ:カニューシャ

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